第51話「バーミリオンの死闘(前編)」


○ シーン1 ワーグナー 交響曲 第2楽章

 宇宙歴799年帝国歴490年4月6日、帝国軍の各艦隊が各地に散ったことを知ったヤン・ウェンリーは艦隊をガンダルヴァ星系に向けた。ラインハルトとの1個艦隊同士の決戦には持ち込んだヤンだが、ラインハルト自身がハイネセンに向かっており、これを迎え撃つには帝国軍の他の艦隊が離れきらないうちに会戦しなければならなかった。
 ヤンはフレデリカと状況を分析する。

○ シーン2 チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」 第1楽章

 ユリアンは帝国軍の罠の存在をヤンに指摘する。ヤンもそのことには気付いていたが、ラインハルトを倒す唯一の機会を生かさないわけにはいかなかった。

○ シーン3 BGMなし

 決戦を前にヤン艦隊は小惑星ルドミラで最後の補給をおこなう。

「ジョークだけでは生きられないが、ジョーク無しでは生きたくないねえ」
「おまえさんは存在自体がジョークだろう」
「このところ悪意の表現に磨きがかかってきたのと違うか?コーネフさんよ?」
「いやいや、持てない男の嫉妬に過ぎませんよ。気にしないで下さいポプランさん」
と冗談口を叩き合うポプランとコーネフ。

○ シーン4 モーツァルト ファゴット協奏曲

「いろいろと省みてこんなことを申し込む資格があるかどうか疑問だし.. だけど、言わなくて後悔するよりは、言って後悔したほうがいい」
 ヤンはフレデリカにプロポーズする。

○ シーン5 モーツァルト クラリネット協奏曲

ヤンがフレデリカにプロポーズしたことに心中穏やかでいられないユリアンと キャゼルヌは語り合う。
「お幸せに」とユリアンは心の中で祝福を送るのであった。

○ シーン6 BGMなし

 バーミリオン星系に到着するヤン艦隊。 待ち伏せるヤンに帝国軍の星系への進入が報告される。 同時に帝国軍も同盟軍の位置を知る。 両軍は3時間の休息をとる。

○ シーン7 モーツァルト 交響曲第41番「ジュピター」 第2楽章

「勝てると思うかい?中将?」
ヤンはシェーンコップに話しかける。

○ シーン8 マーラー 交響曲第1番「巨人」 第4楽章 両軍はついに激突する。

ラインハルトもヤンも混戦に手を焼く。

そんな中、トゥルナイゼンは突撃を敢行するが、これは見方の陣形を乱すことになり、 ヤンの攻勢を誘う結果となる。帝国軍の反撃も激しく、両軍ともに多くの血が流れることになる。

 残酷さが彼らの戦う目的ではなかった。 だが、正義と信念こそがこの世で最も流血を好むものである。 最高指導者が呼号する正義を実現させるため無数の兵士が生きながら焼かれ、 足や腕をなくさねばならないのだ。 だが、権力者たちが戦場から遠い安全な場所にいる限り、正義と信念は命よりはるかに 貴重だと主張し続けるに違いない。 もし、ラインハルト・フォン・ローエングラムが彼ら凡庸で卑劣な権力者たちと一線を 隔しえるとすれば、彼が常に自ら陣頭に立つことにあったろう。 そして、ヤン・ウェンリーは常に自分が大量殺りく者であるとの意識に苛まれていた。 その自分が家庭的幸福など求める資格があるだろうか。 そのおもいがいままでフレデリカ・グリーンヒルの気持ちに応えることをためらわせた 最大の原因であった。 ようやく乗り越えたかに見えても、 完全に心の整理をつけることはできそうになかった。



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